ザイオン国立公園はアメリカ西部、ユタ州南西部に位置し、面積は593平方km(229平方マイル)、最大標高は2050m。1919年に国立公園に指定された。
ラスベガスから170マイル、景色を見ながらゆっくり走って3時間。日帰りもできるためグランドサークルのなかではグランドキャニオンと並ぶ観光客の多い国立公園。ロスアンジェルスからは車で7時間くらいかかる。
数千万年前、浅い海底であった当地域に3000m以上地層が隆起する地殻変動が起き、現在のコロラド平原が出来あがった。その後コロラド川の支流ノースフォーク・バージン川の水流は砂岩を削り、長さ15マイル、深さ800mに渡る現在のザイオン渓谷が出来あがった。
ザイオンには巨大な単石が多くあり、なかでもグレート・ホワイトストーンの高さ720mはオーストラリアのエアーズロックの倍。ヨセミテのエルキャピタンに次ぐ世界二位の大きさをもつ一枚岩である。
グランドサークルの国立公園群では異なった色相の砂岩が層になっている地形をよく見る。サーモン色がエントラーダ砂岩層(Entrada Sandstone)、黄色く見えるのがナバホ砂岩層(Navajo Sandstone)と呼ばれている。ザイオンの岩肌はエントラーダ砂岩層なので風景が全体的に赤っぽく見える。
アメリカの国立公園にはふたつのパターンがあり、それは砂漠とロックマウンテンの乾いた景色。もうひとつは緑ゆたかなみずみずしい山岳森林風景がある。ザイオンはそのミックス。乾いたモハベ砂漠と湿潤なコロラド平原の境目にあり、ふたつの要素が見事に共存するアメリカでは稀有な国立公園だ。赤く染まるロックマウンテンと緑の木々が交じりあった風景がザイオンの魅力なのである。
当地における人類の登場はおよそ8000年から1万年前。今から600年前までは神秘の人々アナサジ(Anasazi)族が平地に、山岳には古代狩猟民族フレモント(Fremont)族が住んだ。ヨーロッパ入植者によるザイオン渓谷の発見は1858年と記録されている。
砂漠と森林が交錯する渓谷風景