ベアマウンテン州立公園はアメリカ北東部、ニューヨーク州にあり面積は21平方km(8平方マイル)、標高は391m。大都市ニューヨーク・マンハッタンから北に50マイル。この公園のさらに西側がハリマン州立公園となっている。
ベアマウンテンは急峻なハドソン川の西岸に位置し崖とゴツゴツとした岩が多い森と湖の風景で1913年にニューヨーク州立公園に指定され、2年後に宿泊施設であるベアマウンテン・イン(Baer Mountain Inn)がオープンした。このホテルは歴史あるアメリカ遺産として2002年に国立公園局が管理するアメリカ歴史登録財(The National Register of Historic Place)に指定されている。
国立公園法の施行、公園局の設置はアメリカが世界に誇れる法律のひとつだ。それに伴い自然環境に馴染む素晴らしい外観、内装を持つ公園内ロッジが多く生まれてきた。その代表、イエローストーン国立公園のオールドフェイスフル(The Old Faithful)の開業は1904。クレーターレイクのロッジ(Crater Lake Lodge)は1915年、ヨセミテのアワ二―(Ahwahnee)は1927年の開業だ。
ベアマウンテン・インは公園ロッジ草創期の1915年というかなり早い時期にオープンした公園史に名を遺す歴史的ロッジであることは間違いない。6年間のリノベーション期間を経て2012年に再開業した。僕たち夫婦は改装後のロッジにそれなりに期待を持って滞在したが、大いに落胆。石と木で出来た建物外観は重厚感に溢れ格調は高いが中身がなかった。客室内装や人的サービスは情けない限り。
T型フォードの生産が始まったのが1908年。とはいえこのホテルが出来た1915年はモータリゼーションのまだまだ黎明期。今ではベアマウンテンはマンハッタンから車で1時間の距離。しかしのんびりと馬車に揺られて赴いただろう開業当初は滞在型リゾートホテルとしての価値は高かったと思う。
このロッジだけではなく都市近郊の歴史的ホテルは遠方からの旅行者より地域の会合やウエディングなど大口の団体客に重きを置くことが多い。そういう時にたまたま当たってしまうとロビーでワインを飲んだり、庭でゆっくり本を読んだりという旅のくつろぎ感は吹っ飛んでしまうのだ。
ニューヨーク州立公園の歴史的ロッジ