エルパソはアメリカ南西部、テキサス州最西端に位置し面積は664平方km(255平方マイル)、最大標高は1140m。ロッキー最南端であるフランクリン山脈が町を東西に二分し一帯は州立公園となっている。
アステカを征服したスペインは1659年、当地にエルパソ・デルノルテの町を創設。1821年、メキシコの独立革命によりメキシコ支配下に置かれる。しかし1848年、アメリカに敗戦したメキシコは当地を二分し北側をアメリカに割譲しエルパソとなった。
エルパソのすぐ南側にある町、メキシコ領シウダード・ファレスは治安最悪の町として名高いが最近その地位をホンジュラスのサンペドロ・スーラに譲り世界ワースト2位に落ちたという。とはいうものの僕はアメリカでは国境を越えていくつかのメキシコの町に出掛けたが、どの町も思いのほか穏やかだった。もちろん用心は必要だけれど旅の基本はチャレンジなのである。
エルパソ人口の80%がメキシコ系アメリカン人ということもあり、町の印象は80%メキシコ。タコス、エンチラーダはうまいしテキーラ、コロナビールは最高だ。コロナはカットしたライムを瓶の中に無理やり突っ込んで瓶ごと飲む。この飲み方スタイルの広告宣伝は大ヒットとなったが、それが災いして同社は瓶のリサイクルにアタマを悩ませているという。
更に気の毒なことに、コロナ禍の風評被害をモロに受け2020年から売り上げが激減している。たしかに「コロナビール(CORONA Beer)」と「コロナウィルス(CORONA Virus)」の発音はよく似ている。
エルパソの町なかをアメリカ大陸横断鉄道が走る(写真1)。現在は貨物輸送がメインだがエルパソ駅にも停まるアムトラック・サンセットリミテッド号はニューオーリンズとロスアンジェルス間を片道48時間で結ぶ。
開通間もない1872年(明治5年)には不平等条約改正交渉に渡米した木戸孝允、大久保利通、伊藤博文はじめ総勢100名の岩倉使節団が乗車した。この年、汽笛一声、新橋から横浜に日本最初の鉄道が開通した。
国境の町