アトランタはアメリカ南東部、ジョージア州の北西部にある大都市。面積は343平方km(132平方マイル)。町の西北にはチャッタフーチー川が流れ、河川域には美しい南部大自然の名残がある。アトランタの東側に降った雨水は東に流れ大西洋に、西側の雨は南に下りメキシコ湾に注ぐのは町なかを東部分水嶺が縦断しているからである。
アトランタといえばまず、映画「風と共に去りぬ」が思い浮かぶ。原題「Gone with the Wind」のWindとは南北戦争のこと。アイルランド入植者の娘スカーレットを取り巻く人間模様と、凋落してゆく南部貴族社会を描いた大河ドラマだった。
当地ではアフリカ奴隷による綿花産業で多くの富豪が生まれた。僕たち夫婦はアトランタ郊外のプランテーションを訪ねたが、まさに「風と共に去りぬ」そのもの。豪壮な家屋敷は当時の贅沢な暮らしぶりを彷彿とさせるものだったが、広い庭の片隅にある今は使われなくなった粗末な奴隷小屋と錆びて朽ちた奴隷用足枷を見た時には心底、奴隷制度の怖さを感じた。
南北戦争は自由貿易主義の北部と奴隷酷使により農業大国を目指す南部の戦いだった。奴隷は解放されたが、そのことにより白人と黒人の対立がかえって鮮明化され差別というあらたな社会問題に発展した。とくにアトランタでは人種間抗争は熾烈をきわめた。
アトランタに生まれ公民権運動に身を投じたキング牧師は志半ばにして1968年テネシー州メンフィスで射殺された。キング牧師最後の地となったロレイン・モーテルも見学したがそのことはメンフィスの頁に記す。オーバン通りにあるキング牧師の生家、教会一帯は国立歴史地区となっている。
バックヘッドの住宅街には19世紀の反映を物語る白亜の家が立ち並び(写真1)、片や黒人街は町の片隅に追いやられている。ニューヨークやロスアンジェルスなど大都会では窺い知れない重い歴史がアトランタにはあった。
公民権運動発祥の地