パドレアイランド国立海浜公園はアメリカ南西部、テキサス州南部にあり、面積は528平方km(203平方マイル)。パドレ島はテキサス海岸線から2マイルほどの沖合に並行する幅2マイル、長さ数百マイルに及ぶ細長い島。
コーパスクリスティから町の東端に架かる3マイルの橋を渡れば、あっけないほどかんたんにパドレ島に到着する。しかし着いてみて感じたのはこの島は陸と海の境界がきわめて曖昧だということだ。これはコースタル・プレーリー(海岸草原、Coastal Prairie)と呼ばれ、まさに草むらと海が混ぜ合わさったような不思議な風景だ。
メキシコ湾岸では陸地と水域の中間にあたる湿原や沼沢地、干潟が豊富でこれらを総称してウェットランドと呼んでいる。水鳥の生息地になるだけではなくウェットランドは地球規模で水系を調節する働き、つまり河川の氾濫や高波、津波などの自然災害を最小限に食いとめる役割も担っているのだそうだ。
当地はウミガメの産卵地としても知られ、加えて280種の渡り鳥が世界各国から飛来するというアメリカでも有数の海浜保護区となっている。
フロリダからメキシコ湾岸地域には稀に桁違いに巨大なハリケーンが襲来する。1554年、スペイン艦隊サンエステバン(San Esteban)はパドレ島海域で暴風雨に遭い難破。巨額の金銀財宝が海中に沈み300人が死亡するという歴史上の海難事故が起きた。
16世紀のスペインといえば無敵艦隊(Spanish Armada)を率いた世界の覇者。1521年にアステカ文明、その後マヤ文明を滅ぼし1532年にはインカを全滅させ、南北アメリカを制圧。東南アジアを含む世界制覇に邁進中のスペイン黄金の世紀(Siglo de Oro)と呼ばれた絶頂期の出来事だった。
それから410年を経た1964年にサンエステバンは当地沖合で発見された。年月をかけ修復を終えた難破船は現在コーパスクリスティ科学歴史博物館に展示されている。
海岸草原、コースタル・プレーリー