アスペン

銀山の町がアメリカ最高の山岳リゾートに変貌

アスペンはアメリカ西部、コロラド州中央部にあり、州都デンバーからグレンウッドスプリングス(Glenwood Springs)を経由してコロラド州道82号線で200マイルの奥深い山中にある。面積は9平方km(4平方マイル)、最大標高は2405m。
元々はインディアンのユト(Ute)族の居住地であったことからユートシティと呼ばれていた。1880年に銀鉱山が発見されヨーロッパ入植者が増大、地名も1881年にはアスペンと変更された。1890年代には銀鉱山としてアメリカ最大の生産量を誇ったが1893年の大恐慌を境に町は徐々に衰退の道をたどり、人々は町から去った。
太平洋戦争後、アスペンはアメリカを代表するスキーリゾートとして再び注目を浴びるようになる。スキーに適した雪質に加えて趣のある旧式の建物が多くある町並みが独特のラグジュアリー感を醸し出したからだ。銀鉱山マネーで設計された高品質な建築物が長引く不況で数十年間活用されなかったことが町興しに却って幸いしたのだ。
アスペン音楽祭が1949年から始まり、1950年にはスキーの世界選手権の開催地となった。1970年代にはアメリカ富裕層や多くの歌手や俳優が移り住み、またヨーロッパ・ブランドのブティックが優雅な町並みを形成し、大自然の中にアメリカを代表する山岳高級リゾートの町が出来あがった。
カントリーの歌手、ジョン・デンバー(John Denver)は当地では圧倒的な有名人。「ロッキーマウンテン・ハイ(Rocky Mountain High)」はコロラドの正式な州歌、カントリーロード(Take Me Home, Country Road)は世界的なヒットとなった。
アスペンには設備の整った素晴らしい宿泊施設がいくつもある。僕たち夫婦は勧められたこともありセントレジス(St. Regis)に宿泊したが次に行くときは当地の特色を活かした自然感あふれる山小屋風ロッジを選択したいと思っている。

アケーディア国立公園

アメリカンロブスターの一大産地

アケーディア国立公園はアメリカ北東部、ニューイングランド地方6州における唯一の国立公園。マウントデザート島を中心に南西の小島アイル・オ・オ、ベイカーアイランド及び本土スクーディック半島の一部が対象で面積は198平方km(76平方マイル)、1919年に国立公園に指定された。
岩場の斜面や点在する小さな島々の風景はたしかにアメリカでは珍しいが、どちらかというと瀬戸内海の眺めにも似ていて日本人として正直に表現すればそれほど凄いとは思わない。急傾斜の岩場風景も海から一気に800mも駆け上る小豆島にある寒霞渓の絶景には到底及ばない。大地の基盤が花崗岩であるという点でも小豆島と同じ。
メイン州沿岸にあるマチャイアスシール島と周辺海域の領有権でカナダとアメリカは紛争中だという。国土面積世界2位と3位の大国が何故こんな小島にこだわるのかと不思議に思うが縄張りの問題はいつの時代も厄介なのだ。
公園内にはロッジはなく僕たち夫婦は島の北東部にある海岸沿いのバー・ハーバーイン(Bar Harbor Inn)に宿泊した(写真4)。外観は素朴な造りに見えるが実は歴史あるホテルで19世紀末から20世紀前半におけるニューイングランド地方の社交の場として栄えたという。テラスから大西洋が望める部屋はとても雰囲気がよい。
やや気取り過ぎにも思えるダイニングの主役は当然の如く当地名産のロブスター。オマール海老とも呼ばれる高級食材でメイン州の漁獲が90%近くを占める。ちなみにロブスターは不老不死、寿命が無い生き物といわれている。実際にはそんなことはないと思うが2009年に捕獲されたロブスターは体重9㎏で推定年齢は140歳。何事もなければ100年くらいは平気で生きるそうだ。
シーフードのバリエーションが少ないからだろうか、アメリカ人はロブスターを飛び切り珍重するが僕にはその価値があまりわからない。メイン州滞在中は結果的に毎日毎日ロブスターを食べることになったが2日目には少し飽きてきて3日目以降は食欲も落ちてくる。茹でたロブスターに溶かしバター。料理方法がどの店に行ってもだいたいワンパターンなのだ。
例えていえば日本の伊勢海老は刺身、蒸し、焼きから始まり唐揚げ、揚げ出し、鬼殻、具足煮、真丈、味噌汁などなどバラエティが豊富。ベイシックを大切にするアメリカ人気質は尊敬しているがロブスター料理にはもうちょっと変化が欲しい。

アーチーズ国立公園

大自然に架けられた巨石の大鳥居

アーチーズ国立公園はアメリカ西部、ユタ州の東南部に位置し面積は309平方km(119平方マイル)、最大標高は1732m。1971年に国立公園に指定された。
数億年前内海だった当地の最高気温は摂氏60度。強い太陽熱で海水が蒸発し岩塩地帯となり、その上部に土砂が堆積し1000m以上の厚さを持った地層が形成された。この地層が4千年前の地殻変動により隆起しコロラド川による浸食により岩塩層が溶解、水や風力の影響で岩に開いた穴が広がり特殊な地形が出来がった。
驚いたことにこの地域にはアーチ形をした巨石が2000以上もあり、総称してアーチーズと呼ばれている。とりわけデリケートアーチはアメリカ国立公園を象徴する風景として広く知られている。
コロラド州デンバー国際空港から車で6時間、さらに傾斜のきつい片道2時間のトレイルを登り切って念願のデリケートアーチに到着。やっと辿り着いたという感激もさることながら赤く染まった巨石アーチの見事なバランスに驚嘆した。高さ17m、空にそびえる岩石のかたまり。
どこか京都の平安神宮大鳥居をほうふつとさせる神々しささえ感じられる。鳥居とは神域への入り口を示し、神を祀る空間と人間が住む俗界を区画する結界であるという。かつて先住民の聖地としてこの場所が信仰の対象になっていたことは想像に難くない。
当地には紀元前後から15世紀頃にかけ狩猟採集と農耕を営む先住民アナサジ(Anasazi)族の居住地となっていた。15世紀以降はユタ州の語源となったユト(Ute)族の棲みかとなった。ユト・アステカ語族(Uto-Aztecan)に属する勇猛な山岳騎馬民族である。
アーチーズはモアブ断層の真上にあり、景観の素晴らしさに加えて強いパワースポットの土地でもある。傾斜の大きいトレイルを登っていても殆ど疲れを感じない。それどころか不思議なことに体中に清々しいエネルギーが満ちてくる。